オランウータン・ゴリラ・チンパンジー・ボノボ、そしてわたしたち。すべてヒト科だが、文字通りヒトそれぞれである。黒鳥英俊氏は約40年に及ぶ都立動物園での勤務でボノボを除くすべての大型類人猿の飼育に携わってきた。
本講演はそんな黒鳥氏に動物園を目指す人たち限定で大型類人猿たちとの交流の全体像を語っていただくものである。それを通して「動物園のひと」たる動物園人であるとはどういうことか、ひいては動物園の理念と現状にまで理解を及ぼす門口としていただきたい。
飼育現場からの勇退後も黒鳥氏は世界の動物園を巡察し、オランウータンを中心に研究と保全活動の前線にも関わり続けている。
受講者は氏のキャリアに圧倒され、あるいは自らの未熟を痛感するかもしれない。それでよいのだ。そこから始めて、なおも動物園をライフワークの場と見定められる者こそが「動物園のひと」なのだ。意欲ある諸氏の参集と研鑽をお待ちする。(ZOOK・森由民)
黒鳥英俊 (くろとり・ひでとし) 1952年生まれ、北海道出身。京都大学大学院理学研究科後期博士課程単位取得退学。
1979年から上野動物園と多摩動物公園でゴリラ、オランウータン、チンパンジーなどの類人猿の飼育を担当。2013年、37年間勤めていた動物園を退職。2010年より上野動物園で学芸員として教育普及や広報の仕事を行う。同年、京都大学野生動物研究センターで動物園のオランウータンの研究を行い、共同研究員として研究を継続している。
また、2007年よりNPOボルネオ保全トラストジャパンの理事として国内外でボルネオに生息するゾウやオランウータンなどの野生動物の保全活動を行っている。現在、星槎大学や大阪eco専門学校で講師も勤めるかたわら、多方面にわたって類人猿の保護、啓蒙活動を行っている。
著書に『オランウータンのジプシー』(ポプラ社)『モモタロウが生まれた』(フレーベル館)、翻訳書に「どうぶつの赤ちゃんとおかあさん」シリーズ『オランウータン』『ゴリラ』(共にスージー・エスターハス著、さえら書房)などがある。
動物関係の大学/専門学校に所属ないしは卒業( 予定含む )し、動物園飼育職を志望する者に原則とします。
ただし、すでに何らかの園館に所属している方も講座の趣旨を理解しスキルアップ・ステップアップを望む場合は応募可能とします。
申込書式に必要事項をお書きいただき、資格を満たしているかを確認させていただきます。
応募多数の場合は有資格者の先着順とさせていただきます。
講義は連続したシラバスによって進行する性質上、単日の受講はできません
本WEBサイトの下部申し込みフォームから 「氏名」 「年齢」 「電話番号」 「メールアドレス」「卒業学校(予定含む)」を記載の上、申込ください
折返し、受講の可否及び、振込口座などメールいたします
受講料先払でキャンセルには応じかねます
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日本における大型類人猿の飼育展示史を概観します。
一部大都市を除き、大型類人猿が各地の動物園で見られるようになったのは戦後になってからです。
本来の生息地を離れ、異質な環境の中、かれらは短命なままに時が過ぎました。現在のような飼育方法が確立されてきた苦闘の歴史を振り返ります。
1970年代まで類人猿のショーはどの動物園でもイベントの目玉でした。高い人気がそれを支えてきたわけですが、それとは裏腹に不適切な飼育が続いてきたのは上述の通りです。
1980年代を迎え、日本もワシントン条約に加わり、野生個体は元より海外からの新個体も得難くなり、殊にはゴリラは個体数の少なさから将来を危ぶまれるようになります。
近年は動物園でも来園者への展示効果より、当の動物たちへの福祉が最優先されるようになり、その変化は急激に進んでいますが、それらの変化を前述のような諸課題と、動物園はどのように向き合ってきたのかに注目しながら講じていきます。
いままで短命だった類人猿の健康管理に目が向けられるようになり、新たな飼育技術が模索されます。
エサの管理から始まり、動物たちの飼育下での日々の生活を見直す環境エンリッチメントの考えも浸透していきました。さらに健康管理のためのトレーニングなどの積極的な技術も取り入れられました。
動物たちそれぞれのあるべき姿。
チンパンジーについては、群れ飼育の定着への推移を見ていきます。
また、飼育の難しいといわれているゴリラのいまの飼育現場を見てみましょう。かれらは育メンなどとも呼ばれますが、その意味合いを解き明かします。
野生では単独生活のオランウータンですが、動物園では素朴な単独飼育で事足りるわけではありません。かれらに何を保障しなければならないか。かれらの芸術家と呼ばれる側面も含めて、紹介し考察します。
大型類人猿を中心に見てきた日本での飼育展示の変遷を踏まえ、講師自身の知見を盛り込んで、世界の動物園の現状を概観します。
アジアの動物園が、各国各園それを超えた連携で急成長しているありさまを紹介します。
近代動物園を生み出したヨーロッパ諸国はいまもそれぞれに個性豊かな動物園を擁しています。そのありさまを経巡りましょう。
アメリカの動物園は、ある意味で現在の世界の動物園をリードしています。
そのことの意味合い、なぜいまアメリカなのか、そういったことを考えていきます。
最後に動物園が取り組む野生動物保全を考えてみましょう。オランウータンへのホースのプレゼントというトピックを中心に、生息域内外でのかれらの保全に動物園が果たし得る役割を考え、あらためて動物園が動物たちに配慮し、かれらのために何が出来るのかを考えて、本講義のまとめとします。
Organizer
Chief STAFF